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岡山の豊かなモノ・ヒト・コトをみせあい、みんなでつくるポップなマーケット「ハレマ FARMERS MARKET」が始動!

岡山市の中心部「ハレまち通り」で、昨年、新しいマーケット「ハレマ」が実験的に2023年の10月、12月、2024年の1月の計3回行われました。

2023年10月に行われたハレマの様子。岡山が誇るオーガニック野菜やこだわりの加工品をはじめ、食材の美味しさを生かして料理する飲食店、食卓を彩るグッズショップなどが並びました。
マーケットが開催されることで、いつもは車が並ぶハレまち通りの駐車場が人で賑わう風景に。
岡山の食材を使った質の高いごはんやお酒がマーケットで楽しめるのも「ハレマ」の醍醐味です。

マチナカに新しい風景をつくった「ハレマ」が、さらにパワーアップします!

瀬戸内市の生産者が主催する「SETOUCHI FARMERS MARKET」と合体し、「ハレマ FARMERS MARKET」として再スタート。2つのマーケットが共創することでどんな化学反応が起こるのでしょうか。

今回は、運営の打谷直樹さん、平野裕治さんをはじめ、生産者の平川敬介さん、伊賀正直さん、飲食店の渡邉隆之さん、西野さわこさんの6名に、それぞれの立場から考えるマーケットの魅力や思いを語っていただきました。

何やら岡山のマチナカですごいことが始まる予感です……!


ハレマのコンセプトは「“おいしい”をみせあう」

北は中山間地、南は平野部が広がり、瀬戸内海の穏やかな気候に恵まれた岡山。思いを持った生産者がつくる食材をもっと家庭で気軽に楽しんでほしい。そんな願いから、生産者と飲食店がそれぞれの”おいしい”をみせあうマーケット「ハレマ」は始まりました。

岡山には素晴らしい生産者がたくさんいます。しかし、マチナカで彼らがつくる食材に出合える機会はそう多くはありません。購入できても、どう調理して良いか分からなかったり、食材本来のポテンシャルを引き出すのは難しいこと。

運営の打谷さんは、岡山の食のポテンシャルを、岡山に暮らしている人々があまり知らないことが「もったいない」といいます。

ベーカリーや不動産、まちづくりなど、様々な事業を手掛ける運営の打谷さん。ハレマには打谷さんのそれぞれの立場からの願いが込められています。

打谷さん「岡山には魅力的で個性的な生産者が点在していますが、各地域の活動だけではマチナカまで情報が届きづらいのが実情です。

もっと多くの人に生産者の魅力を知ってほしいし、この素晴らしさを勝手に自慢していきたい。その発信場所としてハレマをつくりました。

岡山は飲食店のレベルも高いので、飲食店には食材のおいしさを伝える“翻訳者”になってもらい、一緒に岡山の食の豊かさを発信していけたら楽しいんじゃないか。ということをアレコレ考え、僕の行きつけのワインショップ「スロウカーブ」で、店主の渡邉さんと「マルゴデリ」の平野さんに話していたら、「ハレマ」が形になっていきました。」

こんな思いから始まった「ハレマ」では、生産者や料理人など「作り手」が直売し、商品と一緒に思いを手渡しで届ける。「ハレマ」に訪れた人々は、岡山の新しいおいしさに出会えるようになりました。

岡山に農家が直接手渡しできるファーマーズマーケットを

もうひとつ、岡山で食文化を育んできたマーケットがあります。

「ORGANIC FARM 風の谷」の平川敬介さんたちが主催してきた「SETOUCHI FARMERS MARKET」です。

ハレマにも出店する「ORGANIC FARM 風の谷」の平川さん。

平川さん「「SETOUCHI FARMERS MARKET」の始まりは、『岡山にファーマーズマーケットってないよね?』『あるといいよね』という思いと、僕らのような無農薬や無肥料といった自然に真摯に向き合う農家が真っ当に生計を立てていけるように、生産者と消費者の新たな関係性をつくっていきたい、という思いからでした。

個人的には、食文化やこれからの社会経済において“種を採る”ことの可能性と面白さをできるだけ多くの人に認識してもらいたいという気持ちもありました。」

毎月第1日曜日と第3土曜日に開催してきた「SETOUCHI FARMERS MARKET」。

今回、なぜ2つのマーケットが合体することになったのでしょう。

平川さん「マーケットを4年間運営していく中で、新たな関係性の輪が少しずつ広がってきた感触があったのですが、同時に、農家自身がマーケットを運営していく難しさや負担というのが重くのしかかってきていたのも事実で……。

平川さんが農業を行っている瀬戸内市牛窓の「風の谷」。

平川さん「そんな中で、ハレマの運営の方々との縁があり、色々と悩み考えたのですが、マーケットの運営を委ねて共にやっていくほうがいいのかな?と思い、再スタートすることになりました。

『ハレマ FARMERS MARKET』に受け継いでいくものは、僕らが4年前にマーケットを始めた思いそのもの。そして、農家がマーケット運営から離れることで得られる拡がりがあるんじゃないか、ということも期待しています。」

運営の役割を手放すことで、農家として畑と向き合っておいしい作物をつくり、消費者に届けることに専念できる、と平川さんはいいます。

同じく、自然栽培で作物を育てる「Wacca Farm」の伊賀さんは、「ハレマ FARMERS MARKET」を「多様なピースが揃ったマーケット」だと語ります。

自然栽培の面白さは「生産者らしく育つところ」だという伊賀さん。

伊賀さん「僕らは、農薬はもちろん肥料も施さず、自然の循環の中で作物を育てています。作物は僕らの営みに対していつも実りを与えてくれます。

田畑で作物が健やかに育つように、マーケットでは生産者と消費者が有機的につながり、色んな想いが育まれ、岡山ならではのオーガニックの文化が育っていってほしいと思っています。

生産者、飲食店、マーケットを運営する人、各フィールドの面白い人たちがひとつの場に集って何が起きるのか。本当に楽しみでしかないです。」

瀬戸内市にある「Wacca Farm」の畑。

伊賀さん「何事も多様なピースが重ならなければ、生まれたり、発展したり、継続しないと思います。これだけのピースが揃っているのは当たり前ではないことだから、みんながそれぞれの役割を担って大切に育てていきたいと思っています。

課題もあるけど、僕は面白い人たちが集まる「ハレマ」が大好きです!」

伊賀さんの思いは、他の農家さんの心も動かし、ハレマではさまざまな生産者の野菜が買える場になりました。伊賀さん自身も「個人としても生産者としても、良い循環のピースのひとつになれるよう、しっかり田んぼや畑で励んでいきます。」と、よりおいしい農産物をつくる意気込みです。

みんなが垣根なくつながれる場所に

ハレまち通りのそばでナチュールワイン専門店「スロウカーヴ」を営む渡邉さんは、マーケットで生産者、飲食店、暮らしを営む人々が垣根なくつながる風景を見るのが好きなんだとか。

スロウカーヴの渡邉さん。いつもニコニコしながら、的確にワインのおいしさを教えてくれます。日本中の生産者や飲食店からの信頼も厚い。

渡邉さん「岡山市は海にも山にも近く、新鮮で良いものが手に入りやすい環境です。飲食店は無理なく良質な生産者とつながることができるため、料理を食べたお客さんの反応をフィードバックしたり、要望を伝え合うことでお互いを高め合うことができます。

このようなつながりは、出会うきっかけがあってこそのものです。ハレマが新たな出会いの場となることで、三者に良い作用が起こるのではないかと期待しています。」

ハレマでは、待ち合わせをしなくても、知り合いや友人が自然と集まって出会える。そんなあたたかい空間が広がります。

渡邉さん「お客さまにとっては、食材を購入することで生産者のファンになったり、野菜づくりのプロセスや生産者の努力などにも意識が向くようになるかもしれません。気に入った生産者の野菜を扱う飲食店へ行き、プロの技術で調理したものを食べる驚きや楽しみも増えると思います。

僕自身もハレマで市民のみなさんと生産者と飲食店が垣根なく、無理なく出会い、つながる風景を見ることが楽しみですし、僕もそのお手伝いができたらうれしいと思っています。」

食べる人とつくる人が関係性を築くことで、"おいしい"の見え方が変わる。そしてそれは、まちそのものの魅力につながる。そんな出会いを「ハレマ FARMERS MARKET」でつくっていくといいます。

飲食店は、食材のおいしさを伝える翻訳者

「ハレマ FARMERS MARKET」では、飲食店たちの表現力が光ります。「おべんとう、にちにち。」の西野さんもそのひとり。

過去3回のハレマに出店し、どうしたら生産者の魅力が伝えられるか試行錯誤を重ねてきた「おべんとう、にちにち。」の西野さん。

西野さん「飲食店は、娯楽として豊かさを提供する以上に、地域の食文化や、歴史、現状を伝える役割を担っていると思います。

日々の営業で伝えることはもちろんですが、ハレマという場を与えていただいたことで、その思いをさらに表現することができるようになりました。

私が提供しているお弁当の特性を活かし、できるだけ多くの生産者さんの食材を取り入れ、少しずつ楽しんでもらえるよう、メニューを考えています。

ひとつのお弁当にこれだけの生産者さんの手がかけられているいるということが目で見てわかるように表記したり、会話の中でお伝えすることで、食材の楽しみ方を伝えられたらと思っています。」

お米の品種から生産者の農園名までが書かれているお弁当のお品書き。

「育ててもらったまちに恩返しがしたい」

これまでハレまち通りの駐車場で開催されてきたハレマですが、「ハレマ FARMERS MARKET」は装いも新たに開催場所も「下石井公園」へ移動します。2024年に全面芝生化された園内には、ふかふかの芝生でおいしいご飯を食べたり、思いっきり遊ぶ子どもをくつろぎながら眺めたりと、新しい楽しみも。

ハレマの運営を担う「マルゴデリ」の平野さんにとって下石井公園は思い出の場所。「ハレマ」下石井公園での開催は「まちへの恩返し」だといいます。

平野さん「マチナカで生まれ育った私たちにとって、下石井公園こと“キシャコー”は「居場所」でした。携帯電話やスマホが普及してない頃からキシャコーに行けば仲間がいる、そんな場所だったので、キシャコーでマーケットを開催できること自体がとても感慨深いです。

ハレまち通りやキシャコーを含め、岡山のマチナカで遊び学んできたおかげで今の自分やマルゴデリというものがあると思います。

岡山のマチナカで生まれ育ち、学生時代からハレまち通りの変化を見守ってきた平野さん。

平野さん「マチナカというのは多種多様の人々が有機的につながれる場所だと思います。地元も違う、価値観も違う、年代だってバラバラです。でも密集して生活してるので絶対に無関心では生きていけないと思うんです。

それぞれの価値観を尊重し、それぞれが自分のやりたいことを追求してるからこそ、岡山のマチナカは面白いし、知らなかった新しい発見や知らない世界が見えてくるんだと思います。」

マチナカがマルゴデリを育んだ様にマーケットを通じて、いまここで生活してるひとや子どもたちに、食に関する知識や意識、本物のおいしさ、本当の豊かさというコトを伝えて、これからのマチナカを育んでいきたいと、平野さん。

生産者、飲食店、そして、ここに暮らす私たち。みんながハッピーになれる場を育んでいく。岡山のマチナカで生まれ育った平野さんだからこそ、ハレマの運営ができるのかもしれません。

2024年3月に全面芝生化された下石井公園。ここが「ハレマ FARMERS MARKET」の会場です。

みんなでつくる、ポップなマーケットを目指して

最後に、運営の打谷さんの思い描く「ハレマ FARMERS MARKET」の未来について教えてもらいました。

打谷さん「私は、食の選択肢が多い岡山で暮らせていることが幸せだと感じます。

いま日本の飲食業界や一次産業は、円安による世界中からの買い負けや、物流コストの増加、フードマイレージの拡大による環境負荷などに影響を受け、ネガティブな局面に入っています。

そんな状況でも、岡山にはこれだけ身近に魅力的な食材があり、地産地消も叶います。食と真摯に関わる生産者や飲食店たちとコミュニケーションが気軽にとれる場所を提供したい。

そして、マーケットが発展するにつれて、マーケットに関わる人たちの暮らしや食の課題のボトルネックが見えてくるはずです。それを協力しながら解決できる強固なコミュニティをつくっていきたいです。」

「ハレマ FARMERS MARKET」では山の幸だけでなく海の幸も並びます。

打谷さん「もうひとつの目標は、観光の目的地になること。県外の友人が岡山に遊びにきたとき、ついつい香川県の直島や倉敷の美観地区をすすめてしまいがちですが、『ハレマ FARMERS MARKET』が育ち、いつか旅の目的のひとつになってくれたらうれしいです。」

ひとつひとつのピースが揃って生まれたマーケット「ハレマ FARMERS MARKET」が、多くの人の思いを乗せて動き出しました。

目指すは「みんなでつくる、ポップなマーケット」。生産者も飲食店も、そして訪れるあなたも、全員が当事者です。岡山の食の未来をみんなで創っていける、そんなポップなマーケットを目指します。おいしい食べ方や笑顔を“みせあって”、ここに暮らす豊かさを分かち合い、楽しい場所を育てていきましょう。

初回開催は6月16日(日)。マーケットへ行き、ずらりと並ぶ食材に目を向けたり、生産者や飲食店と直接話したりするだけで「岡山って豊かだな」と実感できます。ぜひこのスペシャルな日常を味わってみてください。

Text:岩井美穂(ココホレジャパン)
Edit:アサイアサミ(ココホレジャパン)
Photo:宮田サラ(まめくらし)、和久正義(OpenA)、ココホレジャパン