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ぼくらはゆるくつながるくらいがちょうどいい。ほしい公園の未来を考える「下石井公園デザインミーティング」

岡山市民のオアシス、下石井公園が今年度、天然芝生化に着手するのをご存知ですか?

現在の下石井公園。

このグラウンドが全面芝生になったら、きっと気持ちが良いに違いありません。また新たな賑わいが生まれそうです。

公園が芝生になると、まちにどんなことが起こるの?
生まれ変わる下石井公園は、どんな場になるのがいいんだろう?
岡山のまちとひとにフィットする公園とは?

そんな、公園の未来を考えるため「下石井公園デザインミーティング」がこの夏行われました。子どもからお年寄りまで、岡山市民総勢約70名が集まり、どこかのまちの模倣でない、岡山のマチナカにあるべき公園の姿を持ち寄ります。

今回は「下石井公園デザインミーティング」の当日の様子を詳細レポート。「いつのまにかリニューアルしていた公園」よりも、リニューアルする過程で試行錯誤していくさまを見守っていくほうがより下石井公園を好きになりそうな気がしませんか?

イベントは2部制で、第1部が宮田サラさんによる基調講演。第2部がマチナカのプレイヤーによるディスカッションです。

左から、株式会社まめくらしの宮田サラさんと同社代表取締役社長の青木純さん。

このふたりはなんぞ????と思うみなさまへ。端的にご紹介すると「下石井公園のリニューアルのお手伝いをしてくださる人々」です。

おふたりの会社「まめくらし」は、暮らしにまつわる<コト>を主に手掛け、『人の暮らしを中心に、共同住宅、公園、ストリート、まちなかで当事者たちの関係性をデザインして新たな場と仕組みを育てていく』、さまざまなまちの「日常」をつくる、すごくおもしろいひとたち(最上級褒め言葉)なのです。

世にも幸せな賃貸住宅「青豆ハウス」。共同住宅の住まい方から関係性づくりのデザインまで。青木純さんは、日本で一番愛ある大家さんであり、住人でもある。また、幸せな大家と住民をつくるスクール「大家の学校」も主宰。
東京・高円寺にある「高円寺アパートメント」の運営を担当。宮田さんが住み込みの「女将」として、住人との関係性を育み、マルシェや地域に開くイベント、店舗運営など、住人主体の暮らしの楽しみをサポートし、創造している。
東京の池袋駅東口にあるグリーン大通りと、青々とした芝生が広がる南池袋公園を含めたエリアの価値を高めるため、株式会社nestに出資をし、「まちなかリビングのある日常」を育むさまざまな社会実験やマーケットイベント「IKEBUKURO LIVING LOOP」などの企画運営を行っています。

コミュニケーションを取る努力を重ねることでキセキを起こす

今回は、おふたりがやってきた活動をはじめ、公共空間を豊かにすることでまち自体も豊かな場になっていく様子やその手法など下石井公園のこれからを考えるためにお手本となるアイデアやコツなどの基調講演をしていただきました。

東京からすごい人たちがきた、黒船来航ぞー、であえであえ〜!と人見知りなぼくらは思ったりもするわけですが、なんと宮田サラさんは岡山生まれ、岡山育ち。

大元小学校、桑田中学校出身、完全なるマチナカ娘!会場は「くわちゅう…」「くわちゅうか」「後輩か…」とざわめく。

黒船来航どころか、岡山っ子の凱旋講演です。会場がいっきにほんわかムードになったのはいうまでもありません。そのあたたかな空気のなか、宮田さんが今まで行ってきたエリアマネージメントの話がはじまると、会場は引き込まれていきます。

まず、印象的だったのが、宮田さんの「自分たちで自分たちの暮らしを楽しくする」という思い。企画運営を行っている南池袋公園などは宮田さんが学生時代を過ごし、はじめてひとり暮らしをしたまち。そして、現在宮田さんが女将を務める高円寺アパートメントは現住地です。

まちが面白くなる、イコール、自分の暮らしが豊かになる。じぶんごととしてまちに関われるのは、やはり<住民>なのです。

ちなみに、会場に入りきれなかった(!)市民の皆様も、外でパブリックビューイングに参加。たくさんの方が下石井公園に心を寄せています。

もうひとつ、宮田さんの話で心に残ったことは「まちには、市民の<家以外>の居場所が必要」だということ。たしかに、家と仕事場の往復だけなんて、寂しい。そして、まちについての思い出を振り返ると、自宅でも仕事場でもなく、まちの風景だったりしませんか?

「ごはんを食べた」「遊んだ」「語り合った」「きれいな花が咲いていた」…などなど、まちのあちこちにそんな関わりができればできるほどと、それがまちへの愛着につながっていく、と宮田さんはいいます。

また、宮田さんがエリアマネージメントをするときに心がけていることは「まちの風景」「関わる人」「できること」を増やすこと。そしてそのプロセスを大切に。他者や公共と、コミュニケーションを取る努力を重ねることで小さなキセキを起こしていく。その連鎖が「まちおこし」なのです。

このまとめは全岡山市民に共有したいほど「それな」案件。

宮田さんは最後、「生まれ育った岡山で、なにかお手伝いすることができて嬉しい」と、話してくれました。宮田さんのような人材が岡山のまちづくりに関わってくれることのキセキは、宮田さんが幼いころ過ごした岡山のまちの良い思い出が、宮田さんをこのまちへ呼び戻してくれたような気がします。

そして、宮田さんのように、マチナカの子供たちがここへ戻ってきたくなる、なにかしたくなる。そんなまちの風景を下石井公園でつくりたいな、と思ったのは私だけではないはずです。

ちょうどいい距離感で、ゆるくつながりあうのが合っている街

そして第二部はディスカッションです。進行役のまめくらし青木純さんと、パネリストは、宮田サラさん、岡山市役所の舌崎博勝さん、田町のマルゴデリ平野裕治さん一般社団法人ぷらっと西川の外部アドバイザーであり一般社団法人TOCOL 代表理事の山下リールさんの5名。昔からまちをおこすのは「よそ者」と「若者」といいますが、揃い踏みです。

第2部もみどころしかないディスカッションに。グラフィックレコーディングのイラストから伝えわれ、このアツさ…!

ぜひ大きくして見てほしい…!
(グラフィックレコーディング:uno graph浜竹 睦子さん)
リアルタイムでイベントが可視化されていくのもあたらしくて楽しい試みでした。

2部で印象的だったことは「岡山のマチナカは<個々に>ごりごりまちづくりをしている」と感じたこと。誰に頼まれるわけでなく、各エリアのプレイヤーたちは市民主導の都市改善活動、実証実験と社会実装をこのまちで行っているのです。

平野さんのお店「マルゴデリ田町店」では、ハレまち通り(旧:県庁通り)再整備や、新しい生活様式など、変化していく中心街での朝活提案の試みとして<朝営業>を試験的に行う。朝からフレッシュジュースが飲めるまち、最高では?
リールさんは9月3日に南海トラフ巨大地震が発生したという想定の「1キロ防災+地域防災見本市」を下石井公園で行った。下石井公園を中心に1キロ。町内会やマンション組合などの既存枠を少しだけはみ出して地域防災をきっかけにマチナカの住人・企業の新しい防災コミュニティーをつくり、より「安心安全なまち」へ。
(写真提供:一般社団法人TOCOL)

「いいね、やろう」をすぐに実行する(できる)ところが、岡山のいいところ。会場でも「面白いことは、さっさとやられぇ(やろう)」という岡山弁があちらこちらで聞こえます。

けれど、<みんな一緒>にはやらず、馴れ合いすぎない。個々にのびのび活動しつつ、隣近所をすこしだけ視界に入れておく。そんな関係性こそ岡山のマチナカには合っているのかもな、と思います。

その有り様は公園へ。多様性を受けとめられるフィールドと、ゆるく他者ともつながれるさりげない環境。そんな公園が岡山のマチナカにほしいですね。

寛容じゃない=まちの個性、寛容である=新時代に向けた関係性の構築。このバランスを取りながら下石井公園はまた新たな姿へと変わっていくでしょう。その変化そのものを楽しみながら、市民の憩いの場を、みんなで、じぶんで、つくっていきましょう。

当日の模様は、岡山市公式YouTubeチャンネルにて動画公開しています!
前半レクチャー  後半ディスカッション

下石井公園デザインミーティング アンケート調査結果

・10〜80代まで幅広い年齢層の方が参加された。
・男性が7割を占めた。
・近隣(西川エリア)より、北区・市内の参加者が多い。
・会社員、自営業、公務員の他、学生も参加した。
・週1日以上公園を訪れる人が4割弱、他は月〜年数日が6割強を占めた。
・滞在時間は10〜30分程度が3割以上、30分以上が4割以上を占めた。
・イベント目的で訪れる方が多いが、西川合プラザの利用、散歩やこどもの付き添いなど日常的な利用目的で訪れる方の一定層いる。
・一人で利用する人が4割弱と最も多く、家族や友人など複数人での利用が5割を占めた。
・交通手段は、徒歩または自転車が7割弱を占めた。
・天然芝生化には9割弱が賛成。
・イベント目的以外にも、休憩や食事、自然を楽しむ、散歩など日常的に滞在したい意欲が強い。
・木陰や飲食店・カフェ、イベントができる場などの機能へのニーズが高い。
・今後もデザインミーティングに参加したいという意欲的な方が多い。

text:アサイアサミ
東京都出身。大学在学中、宝島社入社。雑誌編集者を経てタワーレコードのフリーペーパー「TOWER」の編集長を5年間務める。その後フリーランスを経て、2012年岡山県へ移住し、広告会社ココホレジャパンを設立。移住情報誌TURNS副編集長などを歴任し、地方地域、環境問題、ライフスタイルなどのジャンルを得意とする編集者として岡山で楽しく暮らしています。