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第3回:夢をかなえたいなら、まちの余白を使えばいいじゃない「表町2丁目」

まちを愛するひとのインタビュー その3
『餃子世界』・守屋直記さん

表町2丁目はなんといっても岡山が誇る百貨店・天満屋があるまち。商店街にも、宝石店、時計屋さん、リーガルシューズの専門店など、歴史あるハイブランドのお店が並びます。

オカヤママダム御用達のエリアかしらん、と思いきや、表町商店街の裏路地に岡山の若者が集うニューワールドがあるのだとか。

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裏路地に広がるニューワールド(提供:密友)

オランダ通りよりさらに東、あくら通りを南へ下る裏通りに、『餃子世界』の暖簾を発見。そこは表通りのイメージとは意匠が変わる、まさに「世界」が創造されていました。

見るからパンチが強い『餃子世界』は、どうしてこのエリアに新世界を創ったのか。このお店の仕掛け人であり界長(店長)、密友合同会社(meYou Limited Liability Company)のCEO、守屋直記さんに会いに行きました。

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​守屋直記(Moriya Naoki)
密友合同会社 CEO/株式会社Placy イベント・プロモーション担当
1990年、岡山県生まれ。県立天城高校卒業後、早稲田大学理工学部社会環境工学科に進学。景観デザイン研究室で宿場町の再生の研究に従事する。大学を卒業後、2013年に株式会社ストライプインターナショナルに入社。2017年9月に退職後、10月に表町2丁目に餃子世界を開業。2019年3月に2店舗目となるアジア市民会館を表町3丁目に開業。同年11月デザインネオン制作事業に着手。
(特記なき撮影:ココホレジャパン)

餃子屋は手段。目的は「自分でなにかしたい」

真っ先に聞きたいのはやはり「なんで表町2丁目で餃子?」。

守屋さん「なぜ餃子かといえば、餃子を好きなひとの母数が多いのを感じていて、コンテンツとして食いっぱぐれにくいかなと思って。あと岡山に餃子屋が当時は少なかったからです。餃子は好きでしたが、料理が得意だったわけではないです(笑)」

ますます興味がわきます。

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いろんな種類の餃子が食べられます。(提供:密友)

守屋さんは、岡山市のおとなり倉敷市出身。東京の大学へ進学し、東京で岡山発祥のアパレル会社「ストライプインターナショナル」に就職します。約4年間勤め、自らの夢をかなえるために2017年に岡山へ帰ってきます。

守屋さん「ひとりでゼロからなにかを始めたかったんです。サラリーマンから独立するのが第一優先。表町2丁目を選んだ理由は、なによりも家賃。めちゃめちゃ安くて、これはサラリーマンをやめてここでなにかできるかもしれないと思いました。」

餃子屋をやるために借りるのではなく、まだ見ぬ“なにか”をするために物件を借りた守屋さん。

守屋さん「僕が、東京から岡山へ帰ってきたとき魅力的だなと思える街がここでした。裏通りなど、東京でよく飲みに行っていた渋谷ののんべい横丁や新宿の思い出横丁に雰囲気が似ていたんです。」

日本全国どこにでも在りそうなところにはあまり興味が持てなかった。東京からUターンしてからは特に、岡山にしかないまちへ行きたいと、表町にばかり足が向きます。

守屋さん「お金持ちになるためというよりは、とにかく自分でなにか始めることがすごく重要でした。やりたいことをやって、それに共感してくれるひとがいて、ビジネスを進めていくほうが自分の心に優しい。“自分のことをやっているひと”になったほうがこの先楽しいと思ったんですね。」

そんな守屋さんがはじめた『餃子世界』は、餃子を食べられるだけでなく、なにかに挑戦していきたいという若者たちが集い、コミュニケーションを求めてくる場に育っていきます。

守屋さん「30歳の僕が、まちのプレイヤーとしてがんがん動いて楽しそうにしよることがまちにとってめちゃ大事。『自分もやれるんだ』って思ってもらうことです。ここきっかけでスタートアップを目指してるひとが増えてきて、相談にのることもたまにあります。うれしいし、一緒に新事業を考えたりもします。」

一見、若者の勢いではじまったような『餃子世界』ですが、大学で都市工学を学び、商店街の研究をしていた守屋さんだからこそ、お店の設計において、ソフト面もハード面もストラテジックなギミックが緻密に盛り込まれています。

守屋さん「この店舗のつくりが自分的にサイコーだと思っています。岡山で店舗が繁栄しやすいちょっとした決まりがあるんじゃないかなと思っています。カウンターで、狭くて、外から中が見えにくい。あと広いテーブル席があるとなぜか繁盛しにくい。狭いカウンター席だと3人くらい入ったら、なんか盛り上がっているように見えるので、お客さんが入って来やすくなる。

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それで、カウンターは知らないもの同士でも隣に座りますよね。僕はカウンターで接客しつつ、なんとなくみんなで話せるような空気にしたいと思っています。」

なにか面白そうなことがありそうだと『餃子世界』にやってきたお客さん同士がコミュニケーションを深められる場所として2年前に爆誕したのが、2店舗目の『アジア市民会館』。様々なイベントを開催されています。

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2店舗目としてオープンした「アジア市民会館」(提供:密友)

守屋さん「さらに表町のディープなところに若者を誘い込みたくて、3丁目の端にオープンしました。ひとり都市計画みたいな感じです(笑)。
僕は、表町2丁目、3丁目エリアは本当の意味での岡山を知れる場所だと思っています。岡山にしかない店があるエリアだから。ここにこないと岡山がわからない。岡山のことを知りたいというひとを連れてきたくなるのがこのエリアだと思います。
『岡山らしさ』を強化していくべきなのが、このエリア。それをもっと深めていくためにはプレイヤーが増えるしかない。だから、プレイヤーを増やす活動を密かに行っています。」

この活動の裏テーマは、まちづくりと同時に「なんで商店街のほうがメインの通りなはずなのに、裏通りの方が盛りあがっているんじゃろ?」とまちに気づかせることだともいいます。

まちがニーズの移り変わりに気が付き、岡山というまちのポテンシャルを再確認してほしいから。

なによりも、まちに余白があること、余白がある自由を体現するように。

守屋さん「あと、ホットなプレイヤーであることも大事。みんなで頑張るんじゃなくて、まず自分が頑張る。それが点になり、増えて、線になり、最後は面になる。『俺とお前で頑張る』は、お互いに依存しちゃうでしょう。
自分ひとりがつくれるお店の数は限られているから『つくりたいひと』を生み出すしかない。そうしたら、岡山自体がおもしろいことになりますから。」

「若者の地元離れが止まらない」と地方都市のまちづくり界隈では声高に叫ばれていますが、離れているのは若者だけでしょうか?

まちそのものも、若者に歩み寄らず距離をおいているのではないかと、守屋さんの話を聞きながら感じました。

だからこそ、守屋さんのような「なんかようわからんけど、楽しそうにしているお兄さん」が、まちとひとの間にいて、繋いでいることは幸せなこと。そして、守屋さんのつくる場に集まる若者たちの根底に流れるのは、まちを誇りたい郷土愛ではないでしょうか。

餃子をつまみながらこのまちで夢を叶えようとする若者の姿をみると、表町はいつの時代でも市民の夢を叶える場所あって欲しい、と願わずにはいられません。

守屋直記さんおすすめマチナカスポット

もどな喫茶店
表町2-7-23
レトロな雰囲気が魅力の純喫茶。一杯ごとに丁寧に挽いて入れるコーヒーや、かためのプリンがおすすめ。守屋さんも「やっている人たちがすごいこだわりをもってやっているお店なので尊敬しています」と太鼓判。
來輪
京橋町5-2
麺類はうどんが主流の岡山で人気のお蕎麦屋さん。粗挽き蕎麦と細切り蕎麦が選べ、こだわりが随所に感じられる。おすすめは「かも汁そば」。また通に人気の「そばがき」は、もっちりとした食感で老若男女に優しい味。

聞き手:アサイアサミ
東京都出身。大学在学中、宝島社入社。雑誌編集者を経てタワーレコードのフリーペーパー「TOWER」の編集長を5年間務める。その後フリーランスを経て、2012年岡山県へ移住し、広告会社ココホレジャパンを設立。移住情報誌TURNS副編集長などを歴任し、地方地域、環境問題、ライフスタイルなどのジャンルを得意とする編集者として岡山で楽しく暮らしています。

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